病院に入院されている患者さんは、さまざまな病気が原因で抵抗力が低下しています。このため、健康な人には問題の無い、環境中にごく自然に存在する細菌などに感染することで重い感染症にかかる可能性があります。このように、入院中にかかる感染症を総称して院内感染と呼びます。
当院では入院中の患者さんがこうした感染症にかかることなく、安心して病気の治療に専念できるよう『感染対策チーム(ICT)』を組み、力を合わせて院内感染対策に取り組んでいます。
ICTは医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、リハビリスタッフからなり、それぞれの専門分野を生かして、感染対策に関するさまざまな事項の提案・実践・評価を行っています。
【ICTの主な活動内容】
『感染症の発生予防』
定期的に病棟や各部署を回って、水回りや人の手が触れるところなど、細菌が特に多く存在しそうな場所を調べ、その細菌が患者さんへ届かないようにするための対応策の提案や指導を行っています。
『感染症発生時の適切な対応』
現在どのような細菌が流行しているか常に把握し、対応することで、さらなる感染拡大の防止に努めています。また、感染の原因となった細菌に対して正しいお薬(抗菌薬)が使われているか定期的にチェックしています。
『講習会の開催』
専門の講師を招いて手指衛生の大切さや正しい感染予防について学ぶ機会を設けています。ICTメンバー自ら講師となって研修を行うこともあり、毎回多くの職員が参加し、学んだ内容を現場で実践しています。
ICTでは、この他にもさまざまな活動を行っており、感染対策に努めています。
ただし、院内感染を防ぐには、ICTメンバーだけが感染予防を行ったところで成り立ちません。病院内にいる全ての人が感染予防を意識して、行動することが大切です。
これからも、ICTとして、病院全体へ感染症に関する正しい情報を広められるよう、チーム一丸となって院内感染対策に努めていきたいと思います。
『NST』とは“Nutrition Support Team”の略で、日本語では「栄養サポートチーム」といいます。病態栄養に精通した医師、歯科医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士などの職種が各々の専門的知識をもとに、患者さんに最も適した方法で栄養状態を良好に保てるよう主治医と一緒になって考え支援することを目的としたチームです。
近年、糖尿病・肥満・脂質異常症などの生活習慣病との関係で栄養過多が注目されています。しかし、一方で障害を持つ患者さん、特に高齢者の方においては低栄養に陥っている事もよく知られています。低栄養状態は、免疫機能の低下を伴い感染を引き起こしやすく、また主要疾患の回復を遅らせ、合併症を引き起こしやすいことが知られています。また、低栄養状態でリハビリを行うと消耗し、かえって栄養状態の悪化をもたらす危険性もあります。そのため、患者さんの栄養状態を把握し、適切な栄養プランをいち早く導入することは、皆様の回復にとって重要なことなのです。
私たちNSTは、チーム一丸となって栄養管理の面から患者さんの回復を支援します!!
■ 栄養状態の評価
各病棟に配置されているNSTメンバーは、入院時から経時的に身体計測・検査データ・食事摂取量などを見ながら栄養状態の評価を行い、栄養状態の改善にむけ提案をしていきます。
■ NSTによるコンサルタント
特に栄養管理の難しい患者さんについては、NSTが定期回診で栄養管理上の相談を受け、専門的立場から意見を出しあい、適切な栄養プランを検討し、主治医に提案します。その後も経過を見ながら、プラン修正をしていきます。
■ 効果的な栄養管理を行うための食品検討
食欲のない患者さんや経腸栄養の患者さんに対し、効果的に栄養補給ができるように補助食品や栄養剤を使用しています。それらの食品は日々改良されているため、患者さんによいものが提供できるよう定期的な食品の見直しをおこなっています。
■ 研修会の開催
外部講師を招いて研修会を開催し、職員教育を行っています。また、NSTメンバー自身のスキルアップのため、メンバーが講師となって毎月勉強会を実施しています。
人が寝たきり状態になると自分で寝返りを打つことができなくなり、からだの一定の部位に圧がかかります。その部位の血流が遮断され皮膚組織に酸素や血液がまわらず、皮膚が赤くなったり破れて傷が発生したりします。これが褥瘡です。昔は「床ずれ」と呼ばれ、床ずれが発生すると「看護の恥」と言われ、看護師にその処置が委ねられていた時代がありました。しかし今は、その発生機序が科学的に解明され、褥瘡の予防方法、発生後は創傷治癒をどうアプローチするかなど、きちんと学問として認識されるようになりました。
チームメンバーは、専任医師、専任看護師、薬剤師、リハスタッフ、管理栄養士で、各病棟、外来の褥瘡予防委員がリンクナースとして活動しています。
褥瘡回診では、毎週火曜日各病棟から依頼のあった褥瘡保有患者の創のケアを行っています。同時に体圧分散寝具の選定やポジショニング方法、クッションの選定、栄養状態の評価、気をつけるべき動き、皮膚の保清に関することなどをリンクナースやリハスタッフと一緒に検討しています。その他、月1回委員会を開催し、各部署で困っている事、取り組んでいることをケーススタディとして検討しています。褥瘡のケア・予防対策には要因をきちんと分析し、再発予防の手段を講じることが重要です。そのためにはスタッフ教育が重要で、院内研修にもチームメンバーが中心となって取り組んでいます。
現在、予防ケアが功を奏し入院後の褥瘡発生件数は少なく、そのほとんどが発赤や浅いビランで発見しケアによって治癒します。しかし、近年増えている持ち込み褥瘡に対するケアと予防教育はまだ充分とは言えません。患者さんが退院される際は、次のケアの担い手に再発を防ぐ方法などをわかりやすく引き継げるよう取り組みたいと思っています。
また褥瘡以外にもケアの対象となる創傷には、人工呼吸器のマスクによる鼻根部の損傷、コルセットによる皮膚損傷など医療機器に関連する創傷、加えて高齢や病気のために皮膚が弱くなってしまいベッド柵や車椅子に皮膚を打ち付けてできる皮膚裂傷などがあり、その予防にも力を入れていきたいと思います。
「褥瘡発生は病院の質を表す」と言われますので、褥瘡予防対策チームとして医療の質の維持・向上をレベルアップし、貢献できるよう活動していきたいと思います。
長崎北病院では、脳梗塞などの脳血管疾患や高齢の方の入院が多いため、認知症の症状を有する患者さんも多く、入院中にも症状への対応が必要です。認知症の診断がない患者さんであっても入院によってせん妄やBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)が起こりやすい状況となります。そのため、入院される患者さんや対応する看護師への支援が必要不可欠です。
2015年には国の施策として「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」が策定され、「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」を推進していくための7つの柱が掲げられました。この柱の一つに「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護の提供」が挙げられ、入院中の認知症患者への対応に対しても「認知症ケア加算」として診療報酬上評価されることとなりました。当院でも加算の届出を行い2016年より専門チームによる支援活動を開始しています。
週に1回、認知症専門医1名、MSW(メディカルソーシャルワーカー:社会福祉士)2名、認知症看護認定看護師1名、計4名で病棟のラウンドを行っています。各病棟の認知症ケアリンクナースと一緒に患者さんを訪問し、認知症ケアの困りごとや対応についてカンファレンスを行っています。1ヶ月には平均60名前後がラウンド対象となります。また、認知症ケア委員会を月1回開催し、現在入院中の患者の状況報告を行うとともに、実践したケアに対する事例発表の場を設け、認知症患者の対応の向上を目指しています。
院内には認知症認定看護師が2名配置され、認知症ケアチームの活動、外来・入院の看護相談等と共に研修会の講師を務めています。院内の研修会は、新人看護職員、看護補助者、全看護職員などを対象に開催し、認知症患者を多面的に捉える視点や情報を活かす方法など、経験値を活かした教育に取り組んでいます。
24時間患者をケアする看護師の対応力が向上することで、入院患者はより安心して治療を受けられ入院生活を送れると思います。今後もラウンド活動や研修の機会を活かし、看護スタッフのせん妄やBPSDの知識・ケア力のさらなる向上を目指したいと思います。
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