脳神経外科
(Ⅰ)脳卒中を予防しよう(詳しくは冊子:脳外科通信を参照して下さい)
脳卒中は、命を脅かし重篤な後遺症を残すことが多く、再発を起こしやすい病気です。
そのため、
・MRI検査・血液検査等で脳の状態を確認し、①発症を防止することが何より重要です。
・脳卒中を起こしてしまった方では、②再発防止が必要になります。
次のような方はお気軽にご相談ください。
・脳外科通信はダウンロードコーナーからもお読み頂けます。 ⇒ こちらをクリック
(1)一時的に脳卒中のような症状が出現した方、脳梗塞の前触れかもしれません
・手足の力が抜ける。足を引きずる、モノがうまく持てない
・言葉が喋り難い
・片眼が真っ暗で見えない
(2)下記などの理由で脳卒中が心配な方
・身内に脳卒中を患った方がいる
・「脳卒中の危険因子(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)」がある
・頭痛、めまい、歩行時のふらつき、手足のしびれ感などを自覚する
(3)脳卒中を患った方
・脳卒中(脳梗塞、脳出血)は、再発率が高く再発防止対策が必要です。
ただし、脳梗塞再発予防に使用する血液サラサラ薬は、脳出血を合併するリスクがあり、あなたの状態に最適な薬剤選択が必要です。
(4)脳ドックなどで、下記のような異常が指摘された方
・かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)
・かくれ脳出血(脳微小出血)
・脳動脈狭窄症(脳の血管が細い)
・脳動脈瘤(脳の動脈にコブがある)
(Ⅱ)「てんかん」診療
てんかんは100人に1人みられる「よくみかける病気」です。
症状も多彩は、「けいれん」や「意識を失う」発作だけではありません。
同じ発作を繰り返さないためには、その「診断」と「治療」は大切です。
①82歳男性。会話中に突然に前を見てボーとし、会話も停止、口をペチャペチャと動かしている。1,2分ほどで回復するが、その間の記憶がない。
②33歳男性。建築現場で突然、足がバタバタと勝手に動いて転倒する。1,2分で回復。
③36歳女性。買い物中にレジの周りを何度も無意味な感じで回る。家の中でも同様の発作あり、その間の記憶はない。
④16歳女性。朝食時に突然両腕がピクと大きく動いて、茶わんや箸を落とす。
「てんかん」と診断された方々の症状です。
脳の神経細胞が一時的に無秩序に過剰に活動した結果、このように色々な症状が出現します。
高齢者では認知症と間違われる場合もあります。
「てんかん」の原因
小児期に発症する原因不明の「てんかん」の他、脳腫瘍や脳の血管奇形、脳卒中や頭部外傷後の後遺症、認知症など様々な原因で発症します。
診断・治療
「てんかん」以外の病気によって「意識消失」や「けいれん」の発作を生じることも少なくありません。正しい診断のもとで発作『ゼロ』を目指す治療が必要です。
・詳しい問診:発作の状況把握は重要で、特に発作の目撃内容は有用です。
・MRI:発作の原因となる脳病変の有無をチェックします。脳腫瘍や脳血管奇形が見つかる場合もあります。
・脳波検査:「てんかん」診療でももっとも大切な検査です。
しかし、CT、MRIなど画像検査に比べて判読は複雑で「見落とし」と「読みすぎ」の多い検査です。その診断が長期の人生に及ぼす影響は大きく、時間をかけた慎重な判断が必要です。
治療開始後は発作の推移や薬剤の副作用をチェックしていく必要があります。
抗てんかん薬の内服治療で70%前後の発作はコントロールされます。
コントロール不良の場合は、外科的治療を検討する必要があります。
てんかん治療には長い期間が必要です。妊娠・出産や就業や自動車運転など生活の問題点を含めて、「てんかん」とうまく付き合い、克服するための医療提供を目指します。
(Ⅲ)海馬の萎縮を詳しく調べてみませんか
VSRAD画像解析ツールを使用すると、MRI検査で海馬周囲の脳萎縮の有無や、その程度を詳しく評価することができます。
脳の海馬を含む内側側頭部は認知機能に関連し、アルツハイマー型認知症では早期からこの部位が萎縮します。MRI検査でこの部を通常よりも細かく撮影し、専用のソフトで解析することによって、標準に比べてあなたの内側側頭部がどれだけ萎縮しているかを評価できます。
VSRADの検査結果
内側側頭部の標準に対する萎縮程度は4段階で評価されます。
0~1:萎縮がほとんどみられません
1~2:萎縮がややみられます
2~3:萎縮がかなりみられます
3~ :萎縮が強くみられます
VSRAD検査の注意点
・対象は50歳以上です。50歳未満では検査結果が不規則となり正確性に欠けるためです。
・あくまでも内側側頭部の萎縮程度を標準と比較して評価するもので、この結果のみでアルツハイマー型認知症と断定はできません。逆に、VSRADに問題がなくても認知症を発症している可能性もあります。認知症の診断は、あくまでも症状や物忘れ検査結果されにはこれらの推移と対比して検討することが必要です。
(Ⅳ)アルツハイマー病に対する新しい薬「レケンビ(レカネマブ)」を用いた治療をはじめました
①アルツハイマー病とレケンビ治療
アルツハイマー病は、脳の中にアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるたんぱく質が塊となって溜まってくることで引き起こされる病気と考えられえています。
レケンビは、この溜まったAβをとり除く薬剤です。早期に使用することでアルツハイマー病の進行を遅らせ、認知機能の低下を緩やかにすることが期待されています。
本薬剤を使用できる施設は厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」に厳密に規定されています。当院ではその体制を整え2024年8月から治療を開始します。
②治療の対象となる方
アルツハイマー病による軽度認知機能障害および軽度認知症と診断された方に限られます。軽度認知症とは、服薬管理や金銭管理等に支障があっても身の回りのことはほぼ自立している状態が一つの目安になります。
アルツハイマー病以外の認知症や、アルツハイマー病であっても認知症が進行していると判断された場合はレケンビ治療の対象外となり、従来の認知症治療、進行予防対策について検討させていただきます。
外来において詳しい診察さらに各種検査を行い、本剤の効果が期待できるかどうかを判断させていただきます。ご本人の症状・生活を把握しているご家族が同伴してください。
③治療について
外来において2週間に1回、約1時間をかけて点滴します。その後、1時間安静にして経過を見せていただき、帰宅となります。
6カ月ごとに有効性と安全性を評価し、投与継続の判断をします。本剤の投与期間は原則18カ月となっています。
④受診のお問い合わせ
外来は水曜日午前中、予約制で行います。
当院外来までご連絡ください。
(Ⅴ)脳ドック(詳しくはこちら)
調べてみませんか、あなたの脳の健康状態!
当院は日本脳ドック学会認定297施設(2019年7月17日現在)の一つです。
脳卒中は、発症してからでは取り返しがつきません。
発症前の予防がとくに重要な病気です。
あなたの生活歴、検査所見をもとに、一緒に脳卒中の予防を考えましょう。
お問い合わせ、ご予約
社会医療法人春回会 健診センター
095-843-3777