睡眠・覚醒障害はすべての年齢で認められます。また、精神・身体疾患とも密接に関わっています。睡眠・覚醒障害は「不眠症」、「睡眠関連呼吸障害群」、「概日リズム睡眠・覚醒障害群」、「睡眠時随伴症群」及び「睡眠関連運動障害群」に分けられますが、ここではそれぞれの代表疾患を解説します。
全般的な説明は関連外部サイトの「e-ヘルスネット 睡眠と健康」や「過眠症の社」を御参照下さい。
「眠りにつきにくい」、「夜中に何度も目が覚める」、「朝早く目が覚めてしまう」などの不眠症状に加えて、日中の眠気、だるさ、眠れないのではとの不安感などの日中の症状が続く場合には慢性不眠障害が疑われます。症状改善のために、床に就く時間を含めた生活全般の見直しが必要です。必要に応じて睡眠薬を使用することがありますが、不眠症状が改善した後には、薬の服用継続が必要かを再検討することが大切です。不眠をもたらす他の睡眠・覚醒障害が含まれていることがありますので以下の解説も御参照下さい。
いびきの合間に息が止まることを繰り返す睡眠・覚醒障害は閉塞性睡眠時無呼吸です。上気道が狭くなり睡眠中に閉塞もしくは閉塞しかけているため生じます。肥満が高度となると重症化しますが、太っていない方でも、あごが小さい方などにも認められます。小児の場合は扁桃肥大やアデノイド肥大も原因となることがあります。無呼吸による不安定な睡眠の影響で日中に眠くなるだけでなく、夜中に何度も目が覚める不眠の原因にもなります。関連外部サイトのに詳しく解説されています。
夜間の睡眠時間が確保されていても、日中に居眠りを繰り返してしまう方々は過眠症が疑われます。覚醒を維持するために重要なオレキシン神経系が脱落しているナルコレプシータイプ1では、強い眠気に加えて、笑った時などに力が抜ける情動性脱力発作が特徴的です。長時間の睡眠時間を必要とする方では、標準的な睡眠時間ではかなりの睡眠不足となり、居眠りを繰り返していることがあります。外部関連サイトの「過眠症の社」や「日本ナルコレプシー協会なるこ会」に詳しく解説されています。
夜間の睡眠時間が確保されていても、日中に居眠りを繰り返してしまう著しい夜型傾向の場合、朝まで眠ることができず、朝から起きることが難しくなり、遅刻が目立ち、心身の問題を伴うことがあります。不登校や欠勤につながることもあり、社会生活に支障をきたします。このタイプの概日リズム睡眠・覚醒障害は睡眠・覚醒相後退障害です。生体リズムと社会生活サイクルのミスマッチを是正するため、生体リズム調整のための治療介入に加えて、社会の理解と協力が必要となることがあります。概日リズム睡眠・覚醒障害の中には交代勤務による健康問題も含まれます。
寝言が激しく、夢の内容に一致する行動が問題となります。夢を見ているレム睡眠時の異常行動であるためレム睡眠行動障害と診断されます。夢の内容によっては殴る・蹴る動作を伴うこともあり、本人が怪我するだけでなく、ベッドパートナーを怪我させることもあります。早ければ40歳代から、多くは50歳以降に顕在化します。発症時にはにおいがわからなくなっていることもあります。パーキンソン病やレビー小体型認知症の初期症状のこともあるため、長期にわたり診療を継続することが必要です。
本症は安静時にじっとしていることがつらくなる動きたい衝動感が主要な症状です。通常、ふくらはぎを中心とする脚の「むずむず感」「虫が這っている感じ」等の不快感を伴っています。床に就くと症状のために2-3時頃まで 寝つくことができないことがあります。動いている間は症状軽減するため、夜間に歩き回っている患者さんもいらっしゃいます。小児から高齢者まで幅広い年代に認められ、女性では妊娠中に顕在化することもあります。何らかの身体・精神疾患を持つ患者さんの1-2割の方にも合併しています。本症では20ー40秒間隔で出現する周期性四肢運動が多くの方で認められます。
御自身の睡眠を考える場合は、1日の生活をどのように組み立てるかを考えることが重要です。よりよい睡眠のためには朝起きてから眠るまでの生活習慣を見直すことをお勧めします。2014年に公表された「健康づくりのための睡眠指針 2014 ~睡眠12箇条~」を御参照下さい。